季節の香りを楽しもう! 秋の香りとお香の歴史
四季がはっきりしている日本では、その季節を連想させる香があります。
春なら梅や桃、夏なら雨や植物、そして秋を連想させる香りの代表格といえば金木犀。金木犀の季節が過ぎると本格的な紅葉のシーズンを迎え、冬に突入です。
四季折々ならではの香りがある日本には、季節関係なくいい香りを楽しむ「お香」という文化もあります。
今回は秋の香りの代表格・金木犀と、日本人とお香の歴史についてご紹介します。
秋の香りの代名詞「金木犀」
日本には四季があり、その季節に咲く花の香は季節を連想させる最たるものです。
中でも秋の金木犀は春の梅や桃と並び、季節の訪れを感じさせる香りと言えます。金木犀は丈夫で早く育つこと、いい香りをさせることから庭木や街路樹に選ばれることが多い樹木です。
9月の終わりごろから10月の初めにかけてオレンジ色の小さな花を咲かせ、甘く爽やかでほんのりスパイシーな香りを漂わせます。
金木犀の香りに夏の終わりと秋の始まりを感じる日本人は多いことでしょう。
金木犀の季節が終わると、日本は本格的に秋が始まります。
金木犀には「陶酔」「謙虚」という、イメージが異なる花言葉がつけられています。
これは、人をうっとりさせる甘い香りを持つ姿と、1週間から10日程度という開花時間の短さ、香りの強さのわりに小さい花をつけること、雨に打たれると散ってしまうという金木犀の持つ二つの姿にちなんでつけられたものです。
季節に関係なくいい香りを楽しめる「お香」と「アロマ」の違いは?
金木犀のように季節の香りを楽しむほかに、日本では香木などの香りを楽しむ「お香」という文化があります。
金木犀は季節限定の香りであり、花が散ってしまうと楽しむことはできませんが、お香はいい香りのする植物や動物から取れた成分を乾燥させたり、粉末にして練り物にしたりすることで、季節を問わずいい香りを楽しめるというものです。
いい香りにはリラックス効果、ヒーリング効果があるということから、近年は香りを使ったリラクゼーションが人気です。
香りのリラクゼーションではアロマとお香のどちらともが用いられますが、アロマとお香の違いをご存知でしょうか?
アロマは植物から採れる揮発性の油を抽出するのに対し、お香は元となる植物の本体や根、動物の分泌物を乾燥させたものです。
またアロマはオイルであるのに対し、お香は固体という違いもあります。
意外と日本人はお香との付き合いが長い! お香の歴史
お香は奈良時代、仏教とともに日本に伝わりました。強い香りは悪いものを払う力があるとされていたため、お香は長らく宗教儀式で使われるものでしたが、平安時代に入ると純粋に香りを楽しむものに変化します。
平安貴族たちはお香を焚いて自分の衣装や部屋に香りを移し、見えないおしゃれを楽しみました。
鎌倉・室町時代になると、お茶やお花と並んで香木の香りを鑑賞する「聞香(もんこう)」が盛んになり、お香はより洗練された文化へと昇華していきます。
江戸時代に入ると聞香は「香道」として確立される一方、中国から線香の作り方が伝わってきたことから、庶民の間でも線香が広く使われるようになりました。
秋の香りである金木犀と、日本のお香の文化と歴史についてご紹介しました。
日本と同じ島国であるイギリス、ニュージーランドと比較しても、日本はとりわけ植物の種類が多く、その季節ならではの香りを多く楽しめる環境と言えます。
また、お香にも千年以上の歴史があり、季節の香りと季節を問わない香りの2つの「香り」の中で、日本人は豊かな香り文化を形作ってきたのです。
2018年12月11日